Concept
非中央集権型のP2Pシステムであるブロックチェーンは、透明性と高い信頼性を実現し、仲介者を不要とすることで、その登場以降社会への影響を広げ続けています。そして、ブロックチェーンにおいて一定の条件下で実行されるスマートコントラクトは、所有・販売・配布などの多様なプロセスをシステム化し、NFT作品の制作とマーケット形成を支えています。またそれは、アートの在り方の新たな展開をも生み出そうとしています。かつてアーティスト、ハッカーであるレア・マイヤース(Rhea Myers)はブロックチェーンをアートのメディウムとして活用できることを先駆けて提示し、《シンプル・ブロックチェーンアート・ダイアグラム(Simple Blockchain Art Diagram)》(2016)において、そのことを簡潔に表現していました。このダイアグラムではブロックチェーンのブロックを指し示して、「アートがここで生まれている(The art happens here)」と告げています。  本展は「NFTを固有の技術・メディウムとして捉える」ことを意図した2022年4月の展示、「Proof of X – NFT as New Media Art」の続編として位置付けられ、NFTの「Core」とも言えるブロックチェーン及びスマートコントラクトにフォーカスした国内外のアーティストの作品を紹介します。前回の「Proof of X」展から1年、NFTアートを取り巻く状況も大きく変化しました。いわゆる冬の時代と言われる暗号通貨の暴落を経験し、NFTアートに対する投機的な熱が次第に冷めていく中で、改めてNFTを利用するアートとは何か、NFTにできることは何かが問い直されているでしょう。それはつまり、様々な技術的・思想的コンテクストを持つブロックチェーンの可能性と、そこで展開されるスマートコントラクトによる「コードの実行」が持つ力(あるいはその危うさ)について再考することが必要とされているのです。  スマートコントラクトを活用することで、外部データやユーザーのアクションに連動して作品イメージや属性を変化させることのできる「Dynamic NFT」や「Programmable NFT」と呼ばれる作品が登場しました。それらの作品ではアーティストによって生み出される出力は一つにとどまらず、ブロックチェーンを起点としてアートが様々な関係を切り結ぶことを可能とします。透明性を持って実行されるスマートコントラクトの可能性は広汎であり、アーティストと観客・コレクター・キュレーターといったこれまで区別されてきた関係性を変化させ、そして最終的にはアート領域そのものの拡張、さらには人間が行ってきた創造行為の変容を促すでしょう。NFTは、単なるデジタルアセットからより複雑なデジタル生態系へと組み込まれることで、アートの領域を超えて新しい社会像を形成する可能性を秘めています。 本展が進化するデジタル文化の諸相を提示するとともに、より良き議論の機会となることを望みます。
主催:Proof of X実行委員会、NEORT株式会社、株式会社TART
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
特別協力:2R2
協力:Legitimate、GASBON METABOLISM、株式会社アイ・オー・データ機器、P.I.C.S. TECH、株式会社テルミック、一般財団法人ジェネラティブアート振興財団、KUMALEON、fxhash
主宰チーム、作家として参加
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