Akihiro Kato
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WAN NYAN WARS

2021

WAN NYAN WARS

これは犬派と猫派の戦争です。

ボクセルで表現された犬と猫の3Dデジタルアートがそれぞれ100個づつ、NFT(Non fungible token)としてブロックチェーン上に発行され、誰もが自由にオープンなデジタル上のマーケットで売買することができます。デジタルアートはそれぞれ全て色や形が異なった一点ものである上、パーツや色ごとに排出率が設定されていることで、見た目の選択肢だけでなく戦略的な視点での選択肢を生み出します。 NFTを所有している人はそのNFTにそっくりな物理アートをアーティストに要求することができ、要求と合わせて送ることができる”寄付金”が戦争に直接の影響を及ぼします。

物理アートの要求は一つのデジタルアートNFT所有につき1度しか行うことができないため、再度寄付したい場合は所有しているNFTを転売したり別のNFTを購入する必要があります。そのため敬遠されがちな転売という行為も陣営を応援することに繋がります。

戦争の勝敗はシーズンと呼ばれる一定期間にそれぞれの陣営に集まった寄付金の額で争われ、過半数をとった陣営がそのシーズンの勝者となります。シーズン勝者の陣営に寄付(物理アートの要求)をした人のみが物理アートを受け取ることができ、またそれにはブロックチェーン証明書(Startbahn Cert)と紐づけられたICチップが埋め込まれます。一つ一つのエディションや関連情報が記録されたブロックチェーン証明書はそれ自体がNFTでもあり、発行されたそれぞれの物理アートがどのように来歴を刻むのかをトレースします。

集まった寄付金は犬か猫どちらか勝者の保護団体に全額寄付し、寄付先や分配額についてオープンな議論で決定します。またシーズンは定期的に開催され、デジタルアートや物理アートの発行上限に達するまで続きます。

この作品は単なるデジタルアートではなく、犬派対猫派というシンプルな二項対立を描くことにより、一見遊びのように見えて生々しさのある議論を巻き起こし、「きのこたけのこ戦争」のような”インターネット上の戦争”を生み出します。つまりこれはNFT購入・転売者、物理要求(寄付)者・転売者、寄付先、これらエコシステムを応援する人々、そしてアーティストという全ての人が分散的に関係しあって完成するブロックチェーン時代のインターネット・アート・プロジェクトです。

2021年9月に始まったこのプロジェクトは、2021年10月のシーズン1(猫派の勝利*)、2021年11月のシーズン2(犬派の勝利*)、2022年4月のシーズン3(犬派の勝利*)、2022年10月のシーズン4(猫派の勝利*)と4度のシーズンを経て約50体の物理アートが発行されました。

2021年に起こった”NFTバブル”では、デジタル上の猿の絵やピクセルアートが数億円で取引されるなど熱狂がありました。NFTアートの大部分は誰もが自由にコピーできてしまうデジタルデータの特性はそのままにオーナーシップの移転のみが実現し、それ自体はパラダイムでもありますが、一方で投機的な対象として扱われるために、(作品としても)アートの持つ問いや本質の批評の部分が二の次になってしまっています。この作品はNFTの特性と物理アートの特性の融合、ブロックチェーン技術を使った合意形成、オープンソース文化からインターネット的思考の全てを提示するプロジェクトとなっています。「デジタル作品の価値は残っていくのか?」「なぜNFTでなければいけないのか?」「NFTはどのような新しい絵の具になりうるのか?」という本質的な問いがこの作品から見えてくるのではないでしょうか。

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